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【獣医師監修】猫に生のイカは絶対にNG。腰を抜かすって本当? 食べてしまったときの症状と対処方法

猫に生のイカを与えてはいけません。生のイカに含まれるチアミナーゼが、猫の健康に大きな被害を及ぼすからです。ほかにも猫にイカを与えないほうがよい理由はあります。その理由と誤食してしまったときの対処法を紹介するとともに、「イカを食べると猫が腰を抜かす」の真偽についても解説します。

佐野 忠士 先生

猫は生のイカを食べてはいけない。命の危険あり

イカ丸ごとロースト
deeepblue/gettyimages
「猫は魚介類が好き」というイメージをもたれがちですが、じつは猫にとってイカは要注意な食べ物です。
とくに生のイカは絶対に猫に与えてはいけません。生のイカには「ビタミンB1(チアミン)」を分解する作用を持つ「チアミナーゼ」という酵素が含まれているからです。

ビタミンB1は、生物が生きていくのに重要なエネルギー源となるもの。完全肉食動物といわれる猫が必要とするビタミンB1の量は、人の約4倍といわれています。少しでもチアミナーゼによってビタミンB1が壊されてしまうと、「ビタミンB1欠乏症」を発症しやすくなり、猫の健康に大きな悪影響が出てしまうのです。

また、イカは独特の歯応えがあるため、猫があまり噛まずに飲み込んでしまい、その結果、消化不良を起こす可能性もあります。さらには、イカの内蔵に寄生している寄生虫アニサキスによる食中毒も危惧され、ビタミンB1欠乏症以外にもさまざまなデメリットがあることを覚えておかなければなりません。
猫にイカ、とくに生のイカを与えるのは絶対にやめましょう。

猫がイカを食べたときに見られる症状|悪心、嘔吐、ふらつき、けいれん、苦しそう

高いところから見下ろしている茶色のキジ猫
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
猫がイカを食べたことによるデメリットとして覚えておきたい症状を紹介します。

チアミン欠乏症および中毒(アレルギー)が考えられる症状

◆ビタミンB1欠乏症(チアミン欠乏症)の場合
〈初期症状〉
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、など
〈進行症状〉
めまい、ふらつき、筋力の低下、など
〈重篤症状〉
けいれん、昏睡状態、など

◆脚気の場合(最近は「多発神経炎」と診断されることが多い)
背中や四肢の筋肉の萎縮、立ち上がれない、など

◆アニサキス症の場合
胃のけいれん(お腹を床につけて苦しそう、動かない)、嘔吐を繰り返すなど

症状が出るまでの時間

愛猫がイカを一切れ食べたからといって、すぐに中毒を起こす、死に至るというわけではありません。食べて短時間で症状が現れる場合もあれば、数時間後の場合もあり、食べたイカの状態や量、猫の体調や体質によっても違いがあるので、一概にどのくらいで症状が現れるとはいえません。

猫がイカを食べてしまった場合の対処方法

大きく目を見開いている猫の左斜め横顔アップ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
飼い主さんが与えなくても、目を離したすきに食卓にあったイカの刺身を食べてしまうケースも考えられます。
猫がイカを食べてしまったとき、誤食してしまった際の対処法を覚えておきましょう。

様子を見て異常があれば病院へ

猫が加熱したイカを少し食べてしまった程度であれば、すぐに重篤な症状に陥るわけではないため、慌てて病院に駆け込まなくてもよいでしょう。しばらく猫の様子を観察し、少しでも異常が見られたら獣医師の診察を受けてください。

愛猫が生のイカを食べて何らかの症状が現れている場合や、加熱したイカでも大量に食べてしまった場合は、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。自己判断で無理やり食べたものを吐かせようとするのは、大変危険です。催吐処置は医療行為なので、飼い主さんは絶対にしないでください。

なお、病院に行く際には、以下の内容をメモしていくと診察や処置がスムーズに進みます。

  • 誤飲・誤食した時間(何時間前か)

  • 誤飲・誤食したイカの内容(生か、加熱か)

  • 誤飲・誤食した(と思われる)おおよその量


まずは、飼い主さんがパニックにならないようにしましょう。万が一のときでも落ち着いて行動できるよう、深夜でも受診できる動物病院を探しておくことをおすすめします。

病院での治療方法

病院で行うおもな治療は以下のとおりです。

◇血液検査、超音波検査など

イカを食べたことによる、カラダへの影響を調べます。

◇催吐処置・摘出処置

猫が大量にイカを食べてしまい、まだ胃の中に残っていると考えられる場合は、胃の中身を吐かせる「催吐処置」を行う場合があります。猫が嘔吐を催しやすい薬剤を使い、体に負担をかけないよう注意しながら行われますが、猫が吐ききれない場合には全身麻酔をかけて内視鏡や開腹手術によって取り出すこともあります。

◇点滴・投薬

 ビタミンB1欠乏症の症状が認められる場合は、ビタミンB1を投与するための注射や点滴を行い、症状の改善を図ります。

猫がイカを食べてはいけない理由|チアミナーゼと寄生虫アニサキスに厳重注意

頭に手を置かれて顎を下につけて目をつむっている猫の顔アップ(顔の左が茶色、右側がダークグレー)
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
イカが猫の健康に深刻な被害を与える原因について解説します。

チアミナーゼによるビタミンB欠乏症、猫が腰を抜かす原因にも

イカには、ビタミンB1を分解するチアミナーゼという酵素が含まれています。分解するということは、すなわちビタミンB1を壊してしまうこと。猫は人の約4倍ものビタミンB1を必要とするため、ビタミンB1不足のリスクがあるイカは食べさせないほうが安心なのです。

ビタミンB1は、細胞が活動するためのエネルギー生成に必要で、神経系の機能を正常に保つためにも必要不可欠な栄養素です。欠乏すると、食欲低下や嘔吐、目の瞳孔が開くといった症状のほか、運動失調、体の麻痺やけいれん、てんかん発作などの神経症状や心筋の肥大なども見られるようになります。

とくにわかりやすいのが、ふらついて上手に歩けないという症状です。「猫はイカを食べると腰を抜かす」というのは、こうしたビタミンB1欠乏症の症状から端を発した「いい伝え」であると考えられます。

寄生虫アニサキスで重篤な食中毒も

アニサキスは、イカなど魚介類のおもに内臓に寄生している寄生虫で、人間では重篤な食中毒の症状を引き起こすことが知られています。おもな症状は、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐など。食後数時間から十数時間後に症状が現れることが多いようですが、なかには食後十数時間から数日後に激しい下腹部に襲われるケースもあります。
そうした苦しみを愛猫に与えないためにも、生のイカは猫に与えないでください。

ちなみに、タコはイカとは違い、アニサキスを含む餌がいない海底に住んでいるため、アニサキスが寄生している可能性は低いといわれています。

加熱したイカは大丈夫?

透明のボールにすっぽりハマってじっとしている鼻先がピンク色のブリティッシュショートヘア
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
ビタミンB1欠乏症を招く原因となるチアミナーゼは、熱が加わることで効力を失います。また、寄生虫アニサキスも加熱または冷凍することで死滅するといわれています。

そうした理由から、「生のイカはダメでも加熱したイカなら与えても大丈夫」という情報もあります。
たしかに、イカはタンパク質が豊富な食べ物なので、安全なイカなら食べさせたいと考える飼い主さんもいるかもしれません。しかしながら、加熱や冷凍によって完全に猫に有害なものがなくなったどうか、見た目ではわかりません。

さらに、イカは弾力のある独特の歯応えがあり、猫がよく噛まずに丸飲みしてしまえば、胃腸に負担がかかり、消化不良を起こす心配もあります。

完全に加熱、冷凍処理をしたイカなら、少量であれば猫に与えても大きな問題はありませんが、栄養補給のために積極的に与えたい食べ物ではないことは理解しておきましょう。

スルメ(あたりめ)、イカの燻製は大丈夫?

すやすやと気持ちよさそうに眠っている鼻がピンク色の猫の横顔アップ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
スルメ(あたりめ)やイカの燻製は、塩分が多い食べ物です。しかも、どちらも固いので猫が噛まずに飲み込んでしまい、喉につまらせる恐れがあります。仮に食道を通過したとしても、胃から腸へ進む間に水分を吸って大きく膨らみ、急性胃拡張を起こすこともあります。これらの理由から、スルメ(あたりめ)やイカの燻製は、猫に与えないほうがよいでしょう。

ほかにも「さきイカ」「酢イカ」など、イカを加工した食品はいろいろあります。人間のおつまみやおやつ用に作られた食品には、イカの成分だけでなく、塩分や糖分などの調味料が加えてある場合が多いので、やはり猫に与えるのはNGです。

猫のイカ誤飲を防ぐ方法

くりくりした目が可愛い毛がふさふさのペルシャ猫顔アップ
ねこのきもち投稿写真ギャラリー
愛猫がイカを誤食しないためには、飼い主さんがイカの入った料理をテーブルなど猫の口に届くところに放置しないことが大事です。イカを調理する際は、内臓などを捨てたゴミの処理も気をつけなければなりません。
また、屋外のバケツなどに生ゴミを置いておく場合は、飼い猫以外の猫が中をあさったりしないよう、きちんと管理をしておきましょう。

猫に生のイカは絶対にNG。愛猫の健康を守るならイカはすべて与えないほうが安心

猫の健康を害する恐れのあるイカ。生のイカはもちろんのこと、加熱調理したイカでも100%安全と断言できない以上、猫には与える必要がない食材といえます。愛猫の健康を守るのは飼い主さんの意識にかかっています。安易な気持ちで猫にイカやイカ料理を与えないようにしましょう。
猫には与えてはいけない食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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