貝毒ってなんだ?

2014年2月5日
一般財団法人 東京顕微鏡院
立川研究所 動物検査部 林田瑞穂

貝毒による食中毒

貝毒による食中毒は、有毒なプランクトンを食べたあさりやホタテなどの二枚貝が一時的に毒素を蓄積し、それらの貝を食べた人が中毒症状を起こす現象で、一般的に「貝に中(あた)る」と言います。食用となる二枚貝自身には毒素を作り出す能力はありません。毒素は加熱により無毒化することなく、蓄積で貝の食味が変化することもありません。ですから、普通に調理して喫食し、食中毒になってしまいます。

貝毒には1)麻痺性貝毒2)下痢性貝毒3)神経性貝毒4)記憶喪失性貝毒の4種類があげられます。日本では麻痺性貝毒と下痢性貝毒の発生はありますが、神経性貝毒と記憶喪失性貝毒の発生報告はありません。

貝毒発生のメカニズムと問題点

毒性を持つプランクトンは水温が上がり始める4月ごろから5月ごろの期間に発生することが多いため、都道府県の水産関係部署では冬の終わりから海水中のプランクトンや貝の検査を行い、毒の量を検査し安全性を確かめています。

貝毒の原因成分は、餌であるプランクトンに由来します。麻痺性貝毒成分を持つプランクトンは、世界的には約10種類あります。日本沿岸ではAlexandrium tamarenseとその同属2種及びGymnodinium catenatumの計4種の渦鞭毛藻類が毒化原因になります。地域・季節によって発生する種類が異なり、まれに同時に混在して発生することもあります。下痢性貝毒の原因となるプランクトンは同じ渦鞭毛藻類でDinophysis fortii など3種類が日本海沿岸で出現しています。

近年、毒化した二枚貝を捕食したカニ類やエビ類にも毒が蓄積されることが明らかになってきました。平成11年、麻痺性貝毒が発生した東北地方の沿岸域でトゲクリガニの消化腺である肝膵臓部から高い毒性が検出されました。トゲクリガニの筋肉部(可食部)にはほとんど毒性がありませんでしたが、肝膵臓部がかにみそとして食べられるため大きな問題となってきます。

貝毒の監視と出荷規制

わが国では、現在、貝毒を持った二枚貝が食卓に上らないように、先に述べたように漁場や消費市場において有毒プランクトンの監視が実施され、水揚げされた二枚貝に対してマウスを用いた毒性試験によって安全性が確認されています。この検査で二枚貝の毒力が基準値を超えると、生産者による出荷自主規制措置が講じられます。また、海外からの二枚貝も輸入命令検査で安全を確認したものが流通する仕組みになっています。こうした貝毒監視体制により、市販されている二枚貝で貝毒による食中毒が起こることはほとんどなくなりました。

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