完了しました
男性は、アクセルとブレーキを踏み間違い、娘が歩いていた道路端に向かってハンドルを切りました。娘は、車とポールとの間に挟まれ、圧死しました。
男性本人としては、事故前には毎日のように問題なく運転できていると感じていたようで、法廷で『なぜ事故が起きたのか、自分でも理解に苦しむ』と述べました。家族も男性に運転を依頼していたと聞きました。
結局、根本的な事故原因はわからないまま。今でも悔しくて、むなしいです。
高齢者が、運転を続けるかどうか――。本人や家族に委ねるのは、無理があると思います。娘の事故後も、高齢者による事故で、子どもが犠牲になるケースがなくなりません。同じことが起きないように、問題のある人には運転させないようにできれば、と思います」
改正道路交通法による新制度では、起点日(免許更新直近の誕生日の160日前)から3年以内に11類型の違反歴がある人は、「運転技能検査」を受ける必要がある。全国で免許を更新する75歳以上の7%(年間約15万人)程度が該当するとみられる。期限内に合格できなければ免許は失効する。
これまでも実車による高齢者講習は存在していたが、合否を問うものではなかった。この点が「免許制度の大転換」とされている。
「第一歩ではあると思います。ただ、娘を死なせた男性には、少なくとも事故から3年以内の違反歴はなく、もしこの新制度が当時存在していたとしても、実車試験の対象ではなかった可能性があります。
社会の超高齢化が進む中、運転の必要に迫られる高齢者が増えることは避けられません。車がないと生活できない地域があるのもよく分かります。ただ、娘はもう帰ってきませんし、これからも悲しみが癒えることはありません。事故が起きてからでは遅いのです。
まちの中心部に店や行政施設などを集め、歩いて暮らせるようにする『コンパクトシティー』の構想が注目されています。交通機関が発達した都市部に限って、高齢者の運転を規制する方法もありうるかもしれません。運転免許返納後の交通手段の確保とあわせて、社会全体で議論が進むよう願っています」
5月からの新制度では、安全運転サポート車(サポカー)に限って運転できる免許も新設される。申請すれば、いつでも変更が可能だ 。
「事故の防止に向けて、技術が進歩し、それに合わせた枠組みが整備されるのはいいことだと思います。ただ、当たり前のことかもしれませんが、技術が進んでも、運転する責任が伴うことは絶対に忘れないでほしいです」(聞き手 スタッブ・シンシア由美子)
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