1.名称 | 湧昇流 |
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2.内容 |
海水の流れには表層の水平方向の他に、垂直方向の水の動きがある。後者の下層から
上層に昇っていく流れを「湧昇流」と呼ぶ。湧昇流を発生させるケースとしては次のパ ターンがある。 @風による発生〜海岸沿いに吹く風により、表層の水が海の方向に動き、このスペース を埋めるため、下から上層への流れが発生する。 A低気圧による発生〜気圧が下がると海の表層は分散し、これを補うために下から上層 への流れが発生する。 B多量の河川水流入による発生〜河川水の沖合へ向かう動きに引っ張られて、下から上 層への流れが発生する。流量に対して10倍の湧昇流が発生するとされている。 C岬など地形による発生〜表層の水が岬など複雑な地形にぶつかると、表層水は放射(噴 射)状的に拡散する。これを補うように下から上層への流れが発生する。 D赤道の緯度による発生〜赤道付近では、地球の自転により、北側では北東貿易風が、 南側では南東貿易風が常に吹いており、これに伴って、それぞれ北西・南西の表層水の 流れが発生する。これを補うために下から上層への流れが発生する。 E海底地形による発生〜底層でも深層水の緩やかな流れがあり、これが岩礁など遮蔽物 にぶつかると物理的に下から上層への流れが発生する。 湧昇海域の特徴 この海域では、下層の水、即ち深層水(別項目で説明)などが昇ってくるので、この 海水に含まれる窒素や隣などの栄養物質が供給されるため肥沃な海域となる。従って、 植物プランクトンや、これを食べる動物プランクトン、さらに魚が集まり好漁場が形成 される。 湧昇海域の面積は全海洋の0.1%程度だが、この海域での漁獲は世界の総魚類 生産の約50%を占めると試算されている。標津では海底が浅いため深層水がわき上がる ことは、海底の深い羅臼町に近い北部地区を除き少ないと考えられるが、小さいスケー ルでは、風・河川水の流入など、条件が整えば日常的に発生していると考えられる。 |
3.写真・図版 |
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4.参考図書 | 池田八郎(1998):世界の海洋と漁業資源.叶ャ山堂書店
, 中島敏光(2000):海洋深層水とは?.月刊「養殖」,1月号,蒲ホ書房, |
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5.著者 | 筆者名 : 中尾博己 連絡先 : 根室支庁 根室北部地区水産技術普及指導所 01538-2-3738 電子メール : 執筆日 : 2000/01/24 |
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